君のせい

ある休日。ブラントが急に「頼みごとがある」と言ってきた。
彼にしては珍しいことだと思ったよ。彼は滅多に僕を頼ろうとしないからね。だから僕はその頼みごとを聞いたんだ。
「で、頼みは?」
「…君の」
「僕のなんだい?」
「き…君の匂いの…するものが…ほしい…」
あまりにびっくりしたから飲んでいたコーヒー噴いちゃったけど、しょうがないよね。だって僕の可愛い恋人がそんなお願いをしてきたんだから。けれど、彼はなんでそんなお願いをしてきたんだろう?
「イーサン!おい、コーヒーが」
コーヒーで服が汚れていくことよりこっちの方が重要だよ。
「どうして僕の匂いがするものがほしいの?」
「それより、コーヒー…」
「コーヒーは大丈夫だから答えて」
「でも」
「いいから」
「…」
ブラントが黙り込んでしまった。顔が赤くなっていく。僕はこの瞬間が大好きなんだよ…と言ってはいないよ。好きだけどね?
「早く、コーヒー落ちにくくなっちゃうよ」
「早く落としてくればいいだろっ」
「やだ。答え聞くまで待つよ」
「…」
しばしの沈黙。
やがてブラントが口を開いた。
「…夜落ち着いて寝ることができるんだ」
「全部の理由じゃないね」
「く…」
「ちゃんと言って」
「…」
また沈黙。
そろそろブラントの顔が茹で上がりそうなくらいの赤さになってきているから、やめてあげよう…。
「まあ、いいよ。ちょっとべたべたしてきたから着替えてくるね」
僕が脱衣所に向かうと、ブラントが後ろからついてきた。
「どうしたの?ウィル…」
振り向くと抱きつかれた。彼は顔を僕の肩にうずめたままで口を開いた。
「僕は…君の匂いかぐと、幸せだなって思うし、…その、君が好きだって実感するというか、んっ!?」

このとき、思わず君にキスしてしまった僕は悪くないと思う。
君がかわいすぎたのが悪いんだ!