分析官

あり得ない速さでパソコンのキーボードを叩いている男が一人。顔めっちゃ怖い。目の下のくまが酷いし、見てられない。
「…おい…ブラント…今日何徹目だっけ……」
「3」
「あ…ああ…そっか…。何か食べる?」
「いらない」
「わかった…(ですよね…)」
やばい。かなりやばい。人間は三日間寝ないと死ぬなんて聞いたことあるけど、この様子じゃまるで憤死だ。誰に怒ってるって?イーサンに決まってるだろ!?あいついろいろ壊しまくったし。けど、もう任務から戻ってくるし、ブラントも一応安心したっぽい。まあまだわかんないけど。イライラおさまらないし。ずっと『イーサン…覚えてろよ…覚えてろよ…』って言いながら仕事してる。

カタカタカタカタ、ダンダンッ!ダンッ!

あんなんじゃキーボード壊れるな…。やばい。体も壊すんじゃないかな、そろそろ。笑えない。何か差し入れてやろうかな、仕事は代われないし。ドーナツ買うか。あれなら食べるだろ……。
そう考えて腰を上げると、どうやらブラントが電話に出ていた。
一瞬眉がぐっと寄って、
…もしや。
僅かにゆるんだ。
…帰ってきたか。
ブラントが走って出口に向かう。足取りが驚くほど軽い。
…覚えてろよなんて言葉、吹き飛んでるな。ドーナツ屋から帰ってきたら、心配ないよって笑うイーサンに、鬼の形相で怒るブラントが見られるんだろうな。これは毎回本当笑えるんだよ。楽しそうなんだよ、特にブラントが。嬉しさ隠しきれてなくってさ。
おっと、考え事しすぎたな、これじゃ2人が戻ってきちゃうぜ。うわ、戻ってきた…、ほら……。

「ごめんってブラント、ただいま!」
「ただいまじゃないだろ、この野郎!お前のおかげで仕事増えて、睡眠は減ったんだ!!」
「心配してくれてたんだね!」
「話聞けよ!…するに決まってるだろ!うちのエージェントだし…」
「素直じゃないなー」
「もういい、黙れ」
……
……