微睡みの

あまりの暑さに目が覚めた。カーテンの隙間から日が差している。朝だ。今日は日曜日だからこんなに早く起きる必要はなかった。ベッドわきのテーブルに置いた携帯を取ろうとすると、鼻先に髪の毛が触れた。携帯が取れない。身をよじり、必死で手を伸ばし、もがくがだめだ。俺はベッドの端に追い込まれていた。動けん。こいつはどうしてこんなに重いのか。それより俺がこんなに動いているのに起きないとはどういうことだ?しかもこいつのせいで暑いのか!春なのに!

「起きろ…俺を離せ」
「んー…」
「おい…」
「んんんんんんん」
「おい起きろ!離せ!」
「いーやーだー!」
「なんで嫌なんだよいいだろ!」
「いや」

困った。朝から甘えたで少し面倒だ。暑いからなおさら面倒だ。甘えたになったこいつはまず俺から離れない。

「いいか、まず携帯を取らせろ」
「なによ、俺より携帯なわけ?」

こういうときのこいつは普段あまり言わないことを言う。

「そういうわけじゃない」
「ま、いいや」

自分で思ったよりも真剣な声色になり、こいつも信用したようだ。俺は解放された。こいつをまたいだまま携帯を取った。すると、いきなりシャツの襟首を下に引っ張られて、俺はまともにこいつの上に乗っかった。片手が塞がって体を支えきれなかった。
こいつが自分で引き倒しておいて、「ぐえ」とかいう情けない声を出したのは少し笑えた。

「おい、なんのつもりだグエロ?」
「ふふ」

せっかく解放されたのにこいつはぎゅうぎゅう抱きついてくる。また暑くなってきた。こいつは笑って答えないし。

「せっかくの日曜日だろメヒコ」
「…そうだな」

 

俺は諦めてこいつの抱き枕に徹することにした。