愉しい賭け事

「お前、乗るか?」

なぜ断れなかったのか不思議だった。俺は馬鹿だった。

 

「ねぇメヒコちゃん」
「ナメてんのか?」
「ナニを?」
「舐めてほしかねえよ!」

俺たちのやり取りはいつも…ほとんど下品で、くだらなくて、面白い。
俺はいつもより飲んでたし、滅多にぼんやりしないグエロがぼんやりしてた。二人してぼんやり酒を飲み、何が起こったって笑えるくらい。楽しかったから、つい羽目を外す。家だったのが悪かった?

「お前は…金髪の…牝馬殺し…ジョシュア」
「最高じゃねえか…メヒコちゃん!」

なぜか俺たちはいつの間にか相手を褒めていた。なぜだかわからないが、褒めていた。普段じゃ考えられないだろ?さっきのはわりと気に入られて抱きつかれた。なんか触り心地が良かったような…。

「牝馬ねえ…メヒコも俺にころされる?」
「バカじゃねえの、俺は違うだろ…俺は…ころすほう」
「そういやメヒコちゃんうまいのー?」
「俺はめちゃくちゃうまいぜ…」
「俺もうまいぜー、メヒコちゃんより」
「嘘つけよ」
「嘘じゃねえよほらー」

いうなり首筋を触られた。思わず背が震えたし、「ぅぇ…」という色気もクソもない声が出た。首筋が気になって摩る。

「なにしやがる…」
「スキあり!」

次は脇腹か!と思うも一歩ガードが遅れてまたあられのない声を出した。

「メヒコちゃんはほんともう…」
「くっそ…」

グエロはやれやれというふうにおおげさに手を広げたり首を振ったりしている。腹立つ。せめて自分と同じ程度に恥ずかしい思いを!

「グエロ」
「ぐふっ!」

決まった。タックルは危ない。…とりあえず俺はグエロをベッドに沈めて、手近のネクタイで腕を縛り上げた。固定も忘れない。
そしてさっきグエロがやったのと同じようにしてやった。しかしこの男は俺のようにはならなかった。それどころかまだまだだなという風にこちらを見る。

 

「メヒコよお」

この口はロクなことを言わない。

「勝負しねえか」

「このまま続けてどっちがへばるか」

「お前、乗るか?」