塩と砂糖

「あちぃー!!!!なあメヒコちゃん、今日暑くない?」
「お前の方が暑苦しいぜ。ただ薄着の美女が増えるからそこはありがたいな」
「…メヒコってなんかそういうとこあるよな」
「お前も似たようなもんだろ!」

今月の最高気温を記録した日。だからと言って、仕事は休めない。ついでに職場に冷たいものはない。クーラーが壊れてるから。

「おいメヒコよ」
「なんだよ」
「食欲あるか」
「ねえな」
「ならアイス食いに行こうぜ。奢る」

昼時。真上にある太陽は俺の全身をじりじり焼いてくる。「隣のグエロはきっと焼いたら美味しいですよ!焼くならこいつ焼いて!」と言いたくなったが、堪えた。
グエロは止まらない。アイス屋に向かっているんじゃないのか?おい…アイス屋…。

「おい」
「んー?」
「アイス屋、通り過ぎたぞ」
「金ない」
「…」
「だからアイスキャンデーで我慢な」

そしてアイス屋の3軒向こうのコンビニに入ったのだった。

「メヒコー!買ってき…死んでる…」
「死んでねえよお前なんで外なんだよ、なんで外で食わなきゃいけねえんだよ」
「アイスは暑いとこで食べてなんぼだろ」

実際、俺は少し死にそうだった。俺にはわざわざ暑い時に暑いまま過ごす趣味はない。こいつおかしいんじゃねえのか…と出会った時から抱えっぱなしの疑問が湧く。

「あれこれ割れない…うそ…ふっぐぐ…」
「貸してみろこの俺が…ぐっ…あれ…」
「死にかけたメヒコちゃんには無理じゃねえ?」
「元気なくせしてこんなのも割れないグエロの腕に筋肉なんてねえんじゃねえか?」
「ああ?」
「やるか?」

そうやってるとコンビニの店員が近づいてきて、アイスキャンデー真っ二つにして帰っていった。怖かった。手と背と頭が少しひんやりした。

「食うか」
「出来るだけ静かに」

案外イケると思いつつ食ってたらグエロが俺の方見てた。

「なんだ」
「メヒコって指とかしゃぶっちゃうタイプ?」
「は?」
「口寂しいんでしょー!」
「何の話だ」
「いやーそういうのはあんまり人前でやっちゃだめだぜ?俺の前ではいいけどー」
「だから…何の話だ…」
「メヒコちゃん怒らない?」
「既に怒ってる」
「言わない!」

言うなり弾かれたように立ち上がって走っていった。お前は子供か?
その後しつこく聞いてみたが結局答えなかった。

 

 

 

後日、俺はこれの答えを知った。全く嬉しくなかった。

「メヒコさ、本当美味そうにしゃぶるよな…それ甘くねえのに」