仕返し

「うわっ!」
ベッドに叩きつけられ、急に目の前が明るくなった。天井の照明が眩しい。今何が起こったんだ…?
「君のせいだぞ…君が僕を怒らせたから……」
ブラントが何やら呟いている…。さっきまで僕は彼に迫ってて…。迫ってて、投げられた。投げられた?投げられた!
「ブラント!投げるなんて酷いじゃないか!」
「こうでもしないと離れなかっただろ」
「確かに離れなかったけど投げるなよ!」
「少し黙ってろ」
…様子がおかしい。怒ってるのは確かだ。でも何か今日はいつもと違う。目が違う。
考えていると彼は僕の手を握ってきた。そのまま引っ張り、僕の上体を起こして手を背中の方に…。もう片方の手も背中に。するとカチャっという音がした。
「…ん?」
「どうした?」
「これは?」
「手錠だよ」
信じられない。ブラントに手錠をかけられた。彼はもう怒っていなくて、楽しそうな目をしている。
「もしかして君、そんな趣味があったのか?」
「まさか」
そう言いながら彼は僕の足を縛った。身動きできない。手錠をどうにかしないと…。
彼は座って、珍しく笑って僕の方を見た。
「楽しそうだな」
「ああ、とても」
「どうしてこんなことを?」
彼は笑って答えない。珍しい。初めて見るブラントと言ってもいい。
「こんなに動いてない君を見るのは初めてかもしれない」
「君が動けないようにしたんだろ。楽しいか?」
「意外とね」
僕は少しイライラしてきていた。これじゃ半分放置だ。ああいうのは好きじゃないのに…。
しばらくすると、おもむろに彼は立ち上がって服を脱ぎ始めた。
「ブラント?」
「着替えるだけだ」
目の前で彼が服を脱いでいる。僕に脱がされるのさえよしとしない彼が…自分から僕の目の前で服を脱いでいる。興奮しないはずがない。
彼は僕の方を見て、僕の明らかな変化に気づいた。
「興奮してるのか?」
「とても…なあ、いい加減解放してくれよ」
「駄目だ。我慢するんだな」
「ウィル!」
「駄目だ」
辛い。これじゃ生殺しだ…。考える間にウィルはパンツ1枚になっていた。
「イーサン」
呼ばれて振り返るとキスをされた。最初から深いキスだった。
「ん、んん…んぅ……」
ダメだ。とても耐えられない。顔が離れそうになる度に舌を絡め、吸い、噛んだ。すると彼は笑い声を漏らして顔を離した。
「おかしいか?」
「いつもの僕ってこんな感じなのかと思ってね」
と言うなり彼はキスを再開した。
「ふぁ…ん……んっ」
舌が入ってくるだけで声が出る…。これだけでもかなり気持ちいい。彼のキスは鎖骨に移動して一気に耳まで舐めあげられた。
「ひあっ!」
体が震えた。ぞくぞくする。
耳元のじゅるっじゅるっという音と快感が頭の芯を溶かす。気持ちいい…気持ちいい…。
彼の顔がまた離れた。
「今日はここまで」
「えっ」
嘘だろ?僕はもうこんなに興奮しきっているのに?
「ウィル…ねぇ…」
「明日早いから」
「足りないよ…」
「おやすみイーサン」
額にキスをして、脱いだ服を纏めて彼は行ってしまった。よくわからないけれど、涙が出た。

「おはよう、イーサン」
ブラントは手錠を外し、足の縛りも外した。僕は黙っていた。夜にあんなことされて機嫌いい方がおかしい。
「じゃあ僕は行ってくるから」
彼は機嫌が良さそうだ。今なら答えてくれそう…。
「なんで昨日あんな酷いことを?」
「ああ…あれか。いつも君に主導権握られっぱなしで悔しかったから…つい…ね」
「理由は可愛いな。気は晴れたか?」
「うるさいな。行ってくる」
「行ってらっしゃい」

さあ、今夜は彼をどうしてやろうか。たっぷりお返しさせてもらおう。