凄い奴

朝。作業をしているとイーサンが来た。
「やあ、ベンジー」
「おはよう、イーサン」
何気ない挨拶を交わして、「どうしたんだ」って聞いた。そしたらイーサンが「これを見てくれ」と言ったんだ。嫌に真剣に。ブラントだ。ブラントの何かを見せる気だ。
イーサンが見せてきたのは、端末に映し出された1枚の画像。なんだよ…ん…?ブラントが…ブラントが弓持ってる!!!???あれ!!!???
「そっくりだな…本人にしか見えない…弓以外は」
「最近よく見かけられるらしい。捜しても見つからないそうだ」
「最近?見つからない?えっと…画像はこれだけ?」
「ああ」
…まずブラントにそっくり。双子以上。次に弓。なんで弓?弓で射るの?射るって何を?最後にここで何してる?最近見かけられるらしい?何が起こってるんだ?????
「…うちでも追えない奴ってこと?」
「ああ。かなりの」
ただ1つだけわかるのは、”すごい奴”ってことか。
でも、ここまで見つからないのはおかしい。
「イーサン」
「何?」
「ブラントに聞こう。似すぎだし」
「…」
「イーサン、ブラントはこんな怪しいことしないよ…弓使えるなら別だけど」
「ブラントなら使えそうって…少し思う」
「なんでもできそうだし、目もいいからな」
「どうしよう、ブラントが弓、」
ありゃ。聞きに行かなくてよくなった。
「僕が弓ってどういうこと?」
ブラント来た。頼まなくても来た。
「ぶ…ブラント…」
イーサン、声震えてる。いや待って、青ざめちゃだめだ。
イーサンが端末を握りしめているのに気づいたブラント。あれ?顔怖くなったね。何でだろうね?
「イーサン、まさかまた悪質な画像を作ったとかそういうことかな…?」
え、イーサンそんなことしてたの?
「いや、今回は違」
「反論は受け付けない。邪魔したな、ベンジー」
「え…うん」
うわぁ…イーサンブラントに引き摺られていったよ…うわぁ…。
そういえば、”弓を持ったブラントにそっくりなすごい奴”はどうすんのかな?あの様子だと言わざるを得ないよねー。気になるし、こっちでも調べてみるか…。

「ブラント、違うんだ、見てくれこれを!」
「どうせ………え」
ブラントの目の前で映し出されたのは、自分…弓を持った自分。
「誰だ?……僕……?」
「もちろん加工じゃない。」
「ああ…」
こんな奴、見たことない。頭に入ったものを探しても見つからない。忘れるなんてあり得ない。
「誰だ………?」

荷物が多い。こちらにはあまり来たことがない。写真を撮られたことには気づいていたが、何もしていない。まだ下見だしな。荒立てたくなかった。まあ、見つけられるのは時間の問題だが。良いだろ、それが目的だからな……。